夢と情熱で歩き続けた3万㎞/伊能忠敬は人生謳歌の達人だった



伊能忠敬の名言

夢を追うのに早いも遅いもない。追うかどうかだ。

人間は夢を持ち前へ歩き続ける限り、余生はいらない。

伊能忠敬(いのうただたか/1745年ー1818年/商人・天文学者・測量家)

この言葉は、日本人の誰もが知る、江戸時代に正確な全国測量を行った伊能忠敬が残したものです。

50歳で息子に家督を譲り、隠居の身で学問に精を出し、全国測量という偉業を成し遂げたことから、「生涯現役」「人生100年時代」といわれる現代で、模範とされる生き方として注目されていますね。

人は老いていく中で、体力・精神面や世間体を気にして、夢を追い続けることや、何か新しいことを始める一歩を踏み出せないこともあります。

そんなとき、第二の人生として19歳も年下の師匠のもとで学び、学問への情熱を抱き続けた伊能忠敬の生き様に勇気をもらう方も多いのではないでしょうか。

伊能忠敬ってどんな人 〜商人時代〜

1995年発行の伊能忠敬切手

伊能忠敬は1745年、千葉県九十九里町で生まれました。

17歳で佐原の名手商家である伊能家に婿入りします。当時の伊能家は業績が傾きかけており、それを若い忠敬は日夜懸命に働き、見事財産を増やしたという言い伝えがあります。

36歳で佐原村名手となり、39歳で名手より上の立場である村方後見(むらかたこうけん)に。

佐原は水郷の町であることから、頻発する川の氾濫による水害や冷害による飢饉のたびに、なんども窮民を助けてきた忠敬。

なかでも1783年に起きた浅間山大噴火による天明の大飢饉でも、忠敬は素早く米を調達し、村民だけでなく関東からの流民にも米や銭を与え、炊き出しを行い、一人の餓死者も出さず、村の治安は守られたといいます。

水郷の町、佐原

こうして村のために長年、身を粉にして働いてきた忠敬には、婿養子に入るときに諦めた「学問をしたい」という夢がありました。

50歳ときにようやく隠居が認められ、江戸で幕府天文方高橋至時(たかはしよしとき)に弟子入りし、その目覚ましい努力によって全国の測量を任され、以後、精密な地図を作っていくことになります。

隠居の身で幕府の天文方に弟子入りできたのは、幼少期からしっかりした教育を受けていたこと、また成人してからも暦書や天文書を入手して仕事の合間をぬって自学に励み、素養があったためといわれています。

伊能忠敬ってどんな人 〜測量時代〜

国立博物館に展示してある伊能忠敬の量程車

伊能測量隊の足掛け17年におよぶ全国測量で忠敬が実際に歩いた距離は約3万3700㎞、なんと地球一周の約80%に相当します!

忠敬はとても根気強く、几帳面な性格だったと言われており、測量隊のリーダーとして隊員に宴酒を禁じるなど、かなり厳しい上司でした。

また17年にもおよぶ測量を成し遂げたことから、強靭な体を持っていると思われますが、実は持病を抱えて体が弱く、旅先で寝込むこともありました。

歯痛に悩まされ、後年は歯が一本しかない状態でも測量を続けていたとか…。

素晴らしい偉業の裏には、本当に並大抵ではない苦労や努力がうかがえますね。

こうした努力を支えたのは、「吾等幼年より高名出世を好み候えども…」と長女に宛てた手紙に書いているとおり、学問で身を立てたいという幼少期からの夢だったと考えられます。

まとめ

夢を追うのに早いも遅いもない。追うかどうかだ。

人間は夢を持ち前へ歩き続ける限り、余生はいらない。

伊能忠敬

研究者の中では忠敬は決して天才とはいわれておらず、ただただ本当に愚直の人だったといわれています。

元の性格やそれまで培ってきたものも大きいと思いますが、自分の夢を諦めず邁進する姿にはやはり勇気をもらいます。

年齢や状況を理由に、いろんなことを諦めてしまうこともありますが、忠敬のように愚直に自分の信念や好奇心に情熱を注いで生きていきたいですね。

〜伊能忠敬をめぐる〜

現在でも千葉県香取市には伊能忠敬旧宅が残され、店舗・正門・書院・土蔵が国指定史跡に指定されています。(昭和5年4月25日)

旧宅は一般開放されており、入場料無料です。

伊能忠敬旧宅
旧宅敷地内にある忠敬家訓書の石碑

旧宅のすぐそばには伊能忠敬記念館があります。

伊能測量隊が使用していた道具や、発見された伊能図など多数展示されており、より忠敬の凄さを実感できますよ。

伊能忠敬記念館
古い家が活かされた町並み

香取市は古い町並みや家屋を活かしたお店などが立ち並び、最近話題のスポットになっています。町並みの間には小野川が流れ、なんとも心癒される風景です。

忠敬の足跡をたどりつつ、のんびりした時間を過ごしに、ぜひ香取市を訪れてみてはいかがですか?

伊能忠敬旧宅

  • 千葉県香取市佐原イ1900−1
  • ☎︎0478-54-1118(伊能忠敬記念館)
  • 休館日:年末年始(12月29日から1月1日まで)
  • 開館時間:9:30〜16:30
  • 料金:無料

伊能忠敬記念館

  • 千葉県香取市佐原イ1722-1
  • ☎︎0478-54-1118
  • 休館日:月曜日・年末年始
  • 開館時間:9:30〜16:30
  • 入場料:大人500円/小・中学生250円